社会人になりたての頃、なるほどなと感動した言葉があります。それは、“長所と短所が分かって、そのものの本質が見えてくる”というものです。
ある技術部の人が、自分が開発している機能の長所を紹介しましたが、その上長の方は、“それで、短所は何?”と。私がちょっとけげんな顔をしていると、“長所だけということはなくて、必ず短所もあるはずで、短所も分ければ、そのものの本質が分かるのだよ。”と話して頂きました。
自動車に例えると、快適に速く目的地に行くことができるというのが長所だとすると、それと引きかえに排気ガスを出すというのが短所にあたるのでしょうか。
長年開発に従事してきた者として、短所の見極めが非常に大切であると感じます。当然ながら、いいものを開発しようとしますので、良いところを更に良くするように心がけて開発していきます。逆に、それが落とし穴になる場合があります。長所ばかりに目が行き、対象となるものを色々な角度からとらえることができず、思わぬ短所に目が届かないからです。一歩引いて、全体を俯瞰(ふかん)することを怠ると、後で後悔することになります。自分が開発しているという思い入れが強いと、冷静さがなくし、うまく行きません。たとえ、短期的に成功をしたとしても、中長期的にはうまくはいかない場合があります。
この言葉は今でも肝に銘じています。この言葉は、冷静に物事を見る機会を与え、謙虚さを思い出させてくれます。
今は、中高生を対象に教えるという道に進みましたが、生徒さんも、大学生、社会人と進み、いずれこの言葉の重みを実感されて、より成長されていく事を期待しています。