対象式とは変数を入れ替えても、元の式と同じになる式を指します。
例えば、
\( \qquad \qquad \qquad x^{2}+xy+y^{2} \) <-> \( y^{2}+yx+x^{2} \)この場合、2つの変数であるx, yを入れ変えても、元の式と同じになるわけです。
ここで、対象式の因数分解の問題を解いてみたいと思います。
問:次の式を因数分解しなさい。
\( \qquad \qquad x^{2}y + y^{2}z + z^{2}x + xy^{2} + yz^{2} + zx^{2} +3xyz \)解法1)一つの変数に着目して、整理して因数分解していく。今回のような問題は、この方法が王道だと思います。xについて整理し、因数分解していきます
\(\qquad\) 与式 \( = \left( y+z\right) x^{2} + \left(y^{2}+3yz+ yz^{2} \right) x + y^{2}z+yz^{2} \) \(\qquad \qquad = \left( y+z\right) x^{2} + \left\{ \left(y+z \right)^{2}+yz \right\} x + yz\left(y+z \right) \) \(\qquad \qquad = \left\{ x+ \left(y+z \right) \right\} \left\{ \left(y+z \right)x + yz \right\} \qquad \qquad\) \(\qquad \qquad = \left(x+y+z \right) \left( xy+ yz+ zx \right) \)2行目の式変更では、xの1次の係数である{(y+z)2+yz} の部分をどうしてそうなったかという疑問がわくところですが、xの2次の係数やyz(y+z)のところを見ていると、思いつくのではないでしょうか。
ここで、対象式の特性を使った解法に挑戦したいと思います。変数が3つの対象式の場合、ほぼほぼ x+y+zが因数として出てきます。これをちょっと利用したいと思います。
解法2)
A=x+y+zとおく。
与式の3xyz以外が特徴的なので、まずは共通項が多い箇所に着目して因数分解します。1行目がそれにあたります。1行目で、(x+y)などの足し算が出てきましたので、ここに着目して2行目以降は、Aを導入していきます。
\(\qquad\) 与式 \( = xy\left( x+y\right) + yz\left( y+z\right) + zx\left( z+x\right) + 3xyz \) \(\qquad \qquad = xy\left( A-z\right) + yz\left( A-x\right) + zx\left( A-y\right) + 3xyz \) \(\qquad \qquad = xyA-xyz+yzA-xyz+zxA-xyz+ 3xyz \qquad \qquad \) \(\qquad \qquad = \left( xy+yz+zx \right)A \qquad \qquad \qquad \) \(\qquad \qquad = \left( xy+yz+zx \right) \left( x+y+z \right) \)解き方としては解法1が、王道であると思います。
ここでのポイントは、因数分解する前に、式が対象式であるのであれば、因数分解した後も対象式でなくてはならないという事です。そういった特徴は、維持される事を認識することが大切で、その感覚があると途中で計算ミスをして最後の答えが間違っていても、自分の誤りにすぐに気が付くという方法(見直す方法)をもつことになります。実践では非常に役立つ考え方だと思います。